金銭消費貸借契約及び連帯保証契約が通謀虚偽表示として無効とされた事例
判例タイムズ1524号で紹介された事案です(福岡高裁宮崎支部令和6年1月19日判決)。
私が受けていた時期の司法試験では民法94条2項の類推適用というのは最頻出の論点であり、その前提となる通謀虚偽表示(民法94条1項)というのもよく勉強したものでしたが、実際上、民法94条というのが登場してくることというのはあまりありません。
民法
(虚偽表示)
第94条1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
通謀虚偽表示というのは、当事者が虚偽の意思表示をした場合には無効とするというものですが、多くの場合、契約書などが取り交わされており、それが虚偽だっというのはなかなか通らないことが多いものです。
本件でも、金銭消費貸借契約書とそこに連帯保証がされている書面が存在しており、当事者がその書面を作成したこと自体には争いがありませんでしたが、そのような書面を作成した理由として、被告側は、金銭を借り受けたとされる被告Y1の義理の叔父がY1に住宅を与えたかったものの贈与税が課されることを回避するために、X(原告)に依頼してXがY1に対して資金を貸し付けたことにして住宅の建築を発注したことにしたものであり、消費貸借等の外形を仮装したにすぎないと主張しました。
裁判所は、XとY1らは言葉の問題がありすべてYIの義理の叔父を通じて直接やり取りしていないこと、請負代金はすべて義理の叔父が拠出したのであったこと、Xに対する3回の弁済原資はY1の義理の叔父が拠出していたことや原告はY1らとの関係がこじれてから貸金の返済を求めたといった事情などを指摘し、被告側の主張を認めています。